Spectral DMA-80はどんな人向きのアンプか?

Spectral DMA-80 写真オーディオ

はじめに

 私がSpectaral DMA-80を手に入れてからすでに10年以上が経過した。
 入手以来、これまでの間にAC電圧を100Vから200Vに切り替えて試聴してみたり、FETのプラキャップの有無による違いを試したり、余分なスイッチをジャンプさせたり、配線を交換したり、フューズをあれやこれやと交換して試したり、フューズをジャンプさせたり、インシュレーターをいろいろ試したり etc. とまあ、書き出したらキリが無いぐらい様々な試験や改造による音の違いを楽しませていただいた。これらの改造や試験についてはまたの機会に譲るとして、このアンプの実力を知るうえで大切な事に気がついた。それは、他のパワーアンプは比較的短期間で手放しているが、このアンプはかなり長期に渡って使い続けており、2021年現在も使用中だということだ。ということは、言わずもがなである。
 さて、試聴の目的に話を戻そう。そもそも、この記事を書こうと思ったのは、音楽を良い音で楽しみたい、あるいは、純粋に音楽を楽しみたいと思ってオーディオ機器(システムコンポなどを含む)を購入したにも関わらず、ラジカセ(古い言い方でごめんなさい)で聴いていた時より音のクオリティーは良くなったが、音楽がつまらなく感じている人達に僅かながらでも貢献(というと言い過ぎだが)、少しでも参考にしていただければと思ったからである。
 結論から先に言えば、Spectaral DMA-80は、私にとって2023年時点までに聴いたパワーアンプの中では1、2を争う、音楽の楽しさを伝えるアンプであると言える。
 その理由については現在使用している機器の紹介の後に記したい。

試聴時の機器構成

今回の試聴で使用した機器を上流から順に記す。

  • トランスポート:Mac Book Pro ( 2012年モデル)
  • デジタルケーブル:光ケーブル / USBケーブル
  • DAC:Qutest (CHORD)
  • アナログケーブル:RCA – XLRケーブル
  • プリアンプ:SYNAGY II i (JEFF ROWLAND)
  • アナログケーブル:XLR – RCA ケーブル
  • パワーアンプ:DMA – 80
  • スピーカーケーブル:AWG16(ウェスタン エレクトリック)
  • スピーカー:System 6 (ウィルソン ・オーディオ)

 これ以外には、電源コンディショナーとして、入力200Vの容量3KVAのトランスを使用しており、全ての機器へ100Vと115Vを供給している。

DMA-80の音質は?

 まず一聴して、高い解像度、分解能、分離感が感じられる。また、音が「ふんわり」と部屋の中を漂う様な音を出すのも得意で、ソフトにそういった音が入っていれば、なんとも言い難い音が浮遊する感じを味わうことができる。これはなかなか他のアンプでは出にくい音だ。この特性からなのか、3次元的な音の広がりやオーディオ空間にパースペクティブに展開するボーカルや演奏者そしてホールまでをも感じ取ることができる。
 高域の美しさも特筆ものであり、加えて硬過ぎず柔らかすぎず程良い感じの高域が楽しめる。ドラムのハイハット、チューブラーベルやピアノなどの高域は、アタックから音が消え入る瞬間まで、本当に美しい。アタックの部分が美しいのは、このアンプの反応(立ち上がり)の良さを表していると思われる。
 また、薄型のアンプでありながら、低域の駆動力にも優れており、とても深々とした低域が出ていた。ただし、軽さを伴った明瞭な低域であり、これは私が使用しているスピーカーによる部分も大きいと思われる。沈み込む様な重低音は今回のシステムでは少々厳しい。しかし、非常に明瞭に聞き分けられる立ち上がりの早い低音は音楽を弾む様に生き生きとさせる力がある。

Spectral DMA-80はどんな人にお薦めか?(まとめ)

 巷ではSpectralのパワーアンプはSpectralとしかシステムを組めないとか、つまらない音のアンプだとか、あっさりしすぎているとか、高域がキツイなどと言う人たちもいるが、その原因は他に組み合わされるオーディオ機器や接続するケーブルとの相性によるものや、音楽ソフトの録音状態などにあることが多い様に思う。
聴き込んでいくと、音楽ソフトのアラまでも包み隠さずそのまま鳴らしてしまう素性の良い素直なアンプであると言うことに気が付くはずである。世の中には、どんな音楽ソフトでも楽しく聴かせてしまうアンプや独特な味付けをしてそれとなく良さげに聴かせてしまうアンプも存在する。しかし、そういったアンプは誤解を恐れずに言うならば、音楽をデフォルメしているのだと思う。
このアンプは、ミュージシャンや録音エンジニアの熱い思いや力量を色付けすることなく正しく伝えることのできるシステムで音楽を聴きたいと真剣に思っている人に是非お薦めしたい。

 

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